まずひとつは、創業者ジョサイア・スポードによる、「銅版転写技法」の開発です。この技法は、銅板に彫った絵柄を薄い紙に転写し、それをさらに陶磁器の表面に転写し、細密な原画を忠実に再現するものです。これにより美しい繊細なデザインを量産することが可能になり、今では多くの窯がこの技法を採用して優れたパターンの製品を供給しています。このスポード伝統の技を堪能できるのが、「ブルー・イタリアン」という作品です。1816年に発表され、オリエンタルな風景や建物をモチーフにした紋様で、オランダ人画家フレデリック・デ・モウヘロンの作品を原画にしたものです。銅版転写の技法により、原画の細密な線画が再現されています。
もうひとつは、創業者の息子で2代目のジョサイア2世による、「ファイン・ボーン・チャイナ」の完成です。ボーン・チャイナの技法そのものは、すでにボウ窯で開発されていましたが、製品としてはまだまだ完成度が低いものでした。これに骨灰量を増やして、より美しく完成度の高い磁器に完成させ、デザイン面での工夫も加え、製品化に成功したのがジョサイア2世です。いまだにイギリスのスタンダードとして受け継がれるほどの品質で、イギリスの磁器産業を大きく飛躍させました。さらに2世は、イギリスの伝統的なストーン・ウェアを改良して、磁器と陶器の両方の長所を取り入れた良質のストーン・ウェアも発明し、陶磁界の先駆者の名を確立します。
イギリスの陶磁界を大きく飛躍させた功績を高く評価されて、1806年、当時まだ皇太子であった後のジョージ4世から、王室御用達の勅許(ロイヤル・ウォラント)を授けられました。
1983年には、スポード生誕250年を記念して、華やかな彩色で果物や草花をあしらった、「トラップネル・スプレイズ」というシリーズが発表されています。このシリーズは、著名な陶磁器コレクターのA・トラップネルにちなんで作られたもので、いかにもスポードらしい品格のあるデザインです。
名実ともにイギリスを代表する名門のひとつとして、現在も忠実に伝統を継承しているスポード窯は、オーソドックスで品格にあふれており、250年以上も英国陶磁器メーカーの草分けとして、様々な陶磁器を世に送り出しています。
スポードは、1986年にロイヤル・ウースターの傘下に入りましたが、その後もスポードのバックスタンプで、シンブルを作り続けていました。しかし残念なことに、1993年にスポードのシンブルの生産は終わっています。
|